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4. 情報受容の特徴
1)車イス使用者は、晴眼者・健聴者であるとは限らないが、自立的に行動する使用者の場合、当面通常の視覚特性・聴覚特性の前提に立って考えてよいと思われる。
2)車イスに座っていることから受ける影響には、次の各点などがある。
a.視点が通常より低いこと。
b.視点が低いことによって視野が狭くなっていること。
c.周辺に立位の歩行者が多く、視野を妨げる要因が多いこと。
d.良好な視野を得るために簡便に移動できないこと。
e.特に近距離の視対象への見上げ姿勢はとりにくいこと。

 

4-2 現状設備への評価
1.被験者による指摘
1)調査駅の自由通路を東西に抜けようとする場合、駅出入口で、階段付属リフト位置など車イスで移動できる経路を知る方法がない。
2)リフトであることを遠くから認められるサインがない。
3)駅出入口で、改札口ヘ行くことのできる経路を知る方法がない。
4)エレベーターの案内について、どこにあるのかだけではなく、どことどこを結ぶエレベーターであるかを知りたい。行先がわからなければ利用できない。
5)ビジュアル・サインを辿っても、階段に出てしまい、行きつ戻りつして車イスで移動できる経路を探す場合が多い。
6)サインを辿ってトイレに行くと、階段があって上れない場合がある。
7)車イスで使用できない駅は、それをはっきり示してもらう方がよい。
8)通路にある吊下型のサインは、人影に隠れないように高い掲出位置が望ましい。
9)高い位置にある横長型の運賃表は、目的駅を探すのが大変である。

 

2.被験者による指摘への評価
1)これら被験者からの指摘は、現実にあるビジュアル・サインが車イス使用者から見られることを想定していない場合が多いから、当然な内容と考えることができる。
2)現状の多くの駅を概観すると、以下のような状況である。
a.エレベーターや階段付属リフト位置に、それである旨表示してある例は多い。
b.エレベーター位置を構内で誘導している例はかなりある。
c.エレベーターの行先について、エレベーターの外側に表示してある例は少ない。
d.階段付属リフト位置を構内で誘導している例はほとんどみられない。
e.駅出入口で、昇降設備位置を案内している例はほとんどみられない。
f.「鉄道改札口」「駅出入口」などの誘導サインの中に、車イス使用者の移動経路を示している例はみられない。

 

 

 

 

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